2025/12/5
便秘・お腹の悩み子どもの健康
この記事の執筆者

小渕マヤ助産師 / 医療ライター
助産師として病院で勤務する傍ら、性教育とアロマサービスを提供する助産院Coloréを開業。その事業の一環で、正しい知識を伝えるためにライターとしても活動している。

子どもが便秘で苦しそうにしている姿を見るのは、親としてとてもつらいものです。「お腹が張ってかわいそう」「なんとかしてあげたいけれど、薬に頼る前にできることはないか」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
子どもの便秘は、食生活や生活リズム、時には精神的な要因も関係するデリケートな問題です。この記事では、子どもの便秘対策として食べ物や飲み物、マッサージの方法など、さまざまな視点でご紹介します。
子どもの便秘解消を目指すには、日々の食事や飲み物を見直す「体の中からのケア」と、マッサージや運動といった「体の外からのケア」、そして「排便のリズム作り」がポイントです。この章では、ご家庭で今日から試せる具体的な方法をお伝えします。
便秘解消の基本は、便の元となる食物繊維や水分を増やし、出しやすい硬さに整えるのが大切です。毎日の食事と水分補給から見直してみましょう。
食物繊維は「水溶性」と「不溶性」の2種類があり、いずれもバランスよく取るのが理想です。腸の動きを活発にし、便のかさを増やして排出しやすくする働きが期待できます。

| 食物繊維の種類 | 詳細 |
|---|---|
| 水溶性食物繊維 | 便を柔らかくする働きがある。 海藻類(わかめ、ひじき)、果物(バナナ、りんご、キウイフルーツなど)に多く含まれる |
| 不溶性食物繊維 | 便のかさを増やし、腸を刺激して動きを促す。 野菜類(ごぼう、ブロッコリー)、きのこ塁、豆類、穀物(玄米やオートミールなど)に多く含まれる |
ただし、便がすでに硬くなっている時に不溶性食物繊維を摂りすぎると、かえってお腹が張ることもあるため、まずは便を柔らかくする水溶性食物繊維や水分を意識して取ることから始めるのが良いでしょう。
ヨーグルトやチーズなどの乳製品、みそ、納豆などの発酵食品を日々の食事に取り入れてみましょう。
発酵食品を摂取すると、腸内の善玉菌が増え、腸の働きを整える手助けをしてくれます。また、善玉菌のエサとなるオリゴ糖や先述の食物繊維を一緒に取るとより効果的です。オリゴ糖はバナナや玉ねぎ、はちみつなどに含まれます。ただし、はちみつは乳児ボツリヌス症予防のため、1歳未満の子どもには与えないでください。
子どもは大人よりも体に水分を蓄える能力が低く、汗もかきやすいため、意識して水分補給をしなくてはなりません。便の約70~80%は水分でできており、水分が足りないと便が硬くなってしまい、出しにくくなります。
ただし、ジュースやイオン飲料は糖分が多いため、日常的な水分補給は水や麦茶を中心にするのが望ましいです。食事中だけでなく、起床時、遊びの合間、お風呂上がりなど、こまめに飲む習慣をつけましょう。

食事と合わせて行いたいのが、マッサージや運動による腸への直接的な刺激です。血行を良くし、腸の動き(蠕動運動・ぜんどううんどう)を助けることができます。
腸の走行に沿って優しくマッサージすることで、便の移動を助ける方法です。子どものおへそを中心に、保護者の手のひらでひらがなの「の」の字を書くように、時計回りにゆっくりとさすります。お腹が温まっているお風呂上りや、リラックスしているときに行うのがおすすめです。
ただし、食後すぐは避け、力を入れすぎず、子どもが心地よいと感じる強さで行ってください。

さらに、おへその両脇(指3本分外側)にある「天枢(てんすう)」というツボを、指の腹でゆっくり押したり、温めたりするのも良いでしょう。
体を動かすことは、全身の血流を良くするだけでなく、腹筋を使ったり腸に振動を与えたりすることで、排便を促すことにつながります。特別な運動でなくても、公園での鬼ごっこ、ジャンプ、ダンスなど、日常の中で楽しく体を動かす機会を増やすのがおすすめです。体幹をひねるような動きも腸への刺激になります。
便意は、我慢すると感じにくくなってしまいます。毎日決まった時間にトイレに行く習慣をつけることで、体が排便のリズムを思い出す手助けをします。
人間には、食事(特に朝食)が胃に入ると、その刺激で大腸が動き出し便意を感じやすくなる「胃・結腸反射」という仕組みがあります。この反射が最も強く起こりやすい朝食後に、トイレタイムを設けるのが効果的です。
便意がなくても、トイレに座る時間を習慣にしてみましょう。足が床につかない場合は、足台を置いて踏ん張れる姿勢を作ってあげると、腹圧をかけやすくなります。
子どもが便意を我慢してしまう理由はさまざまですが、「遊びを中断したくない」「学校や園のトイレが落ち着かない」「以前出した時に痛かったから怖い」といった心理面の影響がある可能性があります。
もし排便時に痛がった経験があるなら、まずは食事や水分で便を柔らかくすることを優先しましょう。家庭ではトイレを急かさず、リラックスできる雰囲気を作ることが大切です。
子どもの便の状態を記録する「お通じ日記」も、便秘解消の役に立ちます。
「何日に出たか」だけでなく、「どんな便だったか(硬いコロコロ、程よいバナナ状、ゆるいなど)」、「排便時に痛がったか」などを簡単にメモしておきましょう。
パターンを把握することで、食事内容を調整しやすくなります。また、数日出ていないことが可視化されるため、早めに対処でき、病院を受診する際にも医師に正確な情報を伝えるための資料となります。
家庭での対策を行っても改善しない場合や、便秘以外の症状が見られる場合は、小児科や消化器を専門とする医療機関への受診が必要です。隠れた病気のサインである可能性もあるため、以下の目安を参考に、早めに専門家に相談してください。

排便の頻度には個人差がありますが、一般的に5日以上排便がない状態は、医療機関への相談を考える一つの目安です。たとえ5日以内でも、排便時にひどく痛がったり、出血したり、お腹の張りが強かったりする場合は、早めに受診しましょう。
便秘に加えて、「食欲がまったくない」「元気がなくぐったりしている」「嘔吐を繰り返す」「発熱がある」といった他の症状を伴う場合は注意が必要です。腸閉塞(ちょうへいそく)など、緊急を要する病気の可能性も考えられるため、速やかに医療機関を受診してください。
硬い便を無理に出すことで、肛門が切れてしまう切れ痔(裂肛・れっこう)になり、トイレットペーパーに少量の血がついたり、便の表面に血が筋状についたりすることがあります。
しかし、便全体に血が混じっているイチゴジャムのような便や、黒っぽい便が出る、出血が続くといった場合は、他の消化器系の病気も疑われるため、必ず受診して医師の診察を受けてください。
便秘による腹痛はよくありますが、「お腹が痛い」と激しく泣き続ける、痛みの波が繰り返し来る、お腹を触られるのを極端に嫌がる、といった場合は、単なる便秘ではない可能性があります。このような場合も早めに医療機関を受診しましょう。
家庭で食事や運動に気を配っていても、すぐに便秘を繰り返してしまう場合、慢性的な便秘になっている可能性があります。自己判断で浣腸や下剤といった市販薬を使い続けるのは避けましょう。
医師の診察を受ければ、体質に合った生活指導や、必要に応じて適切な薬を処方してもらえるため、子どもが排便でつらい思いをする回数を減らすことができます。
子どもの便秘解消には、便を柔らかくする食事と水分、腸を動かすマッサージと運動、そして排便リズムを整える生活習慣の見直しが基本となります。
まずは、食物繊維や発酵食品を意識した食事、こまめな水分補給から始めてみてください。そして、朝食後のトイレタイムを習慣にし、お腹のマッサージでリラックスしながら腸の動きを助けてあげましょう。
ご家庭でのケアで改善が見られない時や、ぐったりしている、激しく痛がるなどの心配な症状がある時は、ためらわずに医療機関を受診してください。
