食育のお悩み

【偏食から多様な食へ】段階的アプローチ

「白いご飯しか食べない」「肉ばかり欲しがる」など、特定の食べ物に偏りがちな時期は多くの子どもに見られます。偏食の背景を理解し、適切なアプローチで少しずつ食の幅を広げていきましょう。

偏食の多様な原因を理解する

1. 感覚的要因:

  • 味覚の敏感性(特に苦味や酸味への反応)
  • 触覚過敏(特定の食感への抵抗感)
  • 視覚や嗅覚の特性(色や匂いへの敏感さ)

2. 心理的要因:

  • 食べ物への不安や恐怖(食物新奇性恐怖)
  • 過去の不快な体験(無理に食べさせられた記憶など)
  • 自己主張や自律性の表現

3. 習慣的要因:

  • 限られた食品への慣れ
  • 同じものを好む安心感
  • 食事環境や提供方法の影響

偏食度チェックと対応の目安

  • 軽度の偏食:特定のグループ(緑の野菜など)を避ける
    → 段階的な導入と調理の工夫で対応
  • 中程度の偏食:食品群全体(野菜全般など)を避ける
    → より体系的なアプローチと根気強い取り組みが必要
  • 重度の偏食:極めて限られた食品のみを受け入れる
    → 専門家(小児科医、栄養士、作業療法士など)への相談を検討

段階的アプローチの具体策

1. 受容と理解からスタート:

  • 現状の食べられるものを認め、そこから広げる視点
  • 子ども自身の味覚や感覚の特性を尊重
  • 偏食の原因となる感覚的特性の把握(何が苦手か)

2. 食品への親しみを深める非食事場面での活動:

  • 食材に触れる体験(買い物、調理、栽培など)
  • 食べ物絵本や食育ゲームの活用
  • 食べ物を使った遊び(野菜スタンプなど)

3. 「食べられるもの」を微調整する戦略:

  • 似た特性の食品から導入(例:好きなジャガイモからサツマイモへ)
  • 好きな調理法で新しい食品を提供(例:フライドポテト好きなら他の野菜のフライも)
  • 好きな味付けや組み合わせを活用(例:ケチャップをつけられるものを増やす)

4. 感覚的ハードルを下げる調理法:

  • 苦味を和らげる調理(茹でこぼし、炒めるなど)
  • 食感を変える工夫(すりおろす、ピューレにする、細かく刻むなど)
  • 見た目の抵抗感を減らす(混ぜ込む、ソースをかけるなど)

5. 段階的な「慣らし」のステップ:

  • ①その食品を見る・触る
  • ②匂いを嗅ぐ
  • ③唇や舌で触れてみる
  • ④小さく一口噛んでみる(吐き出してもOK)
  • ⑤少量を飲み込んでみる
  • ⑥少しずつ量を増やす

6. 子どもの自主性と選択権を尊重:

  • 「一口だけチャレンジ」ルールの導入
  • 複数の選択肢から選べる機会の提供
  • 無理強いや感情的な対応を避ける

7. 成功体験の積み重ね:

  • 小さな進歩を具体的に認め、褒める
  • 「食べられるもの」リストの視覚化
  • 子ども自身による達成感の実感

特別な配慮が必要なケース

感覚過敏が顕著な場合:

  • 一度に提供する食品数を限定
  • 食品同士が触れないよう分けて盛り付け
  • 食感の段階的な移行(完全なピューレ→少し粒がある→細かく刻む→小さな一口大)

極端な偏食で栄養面が心配な場合:

  • 小児科医や栄養士への相談
  • 栄養強化食品や補助食品の検討
  • 感覚統合療法など専門的アプローチの検討

長期的な視点で大切なこと

  • 食事を楽しむ雰囲気と体験を最優先する
  • 親のモデリング(多様な食品を楽しんで食べる姿を見せる)
  • 「偏食っ子」というラベル付けを避ける
  • 段階的な変化を認め、焦らない姿勢を持つ

偏食は発達の一時期として多くの子どもに見られるものです。無理なく、子どもの感覚特性を尊重しながら、少しずつ食の世界を広げていくことが、長期的な食の多様性につながります。